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戦闘員 名前 クラス 技能 体力 攻撃力 防御力 俊敏性 精神力 知力 運勢 マクシミリアン 下っ端 射撃、トランプ、スリ 3 4 2 5 4 2 3 グエルニコ ちんぴら(自称ヒーロー) パソコンいじり、ヒーローグッズ制作 1 1 1 2 1 3 3 セス ヒットマン 狙撃 2 2 2 3 5 3 4 ハクロ（予定） ボディーガード 力が強い、頑丈、相手の性質を本能的に察知 ハスカ 戦闘員 薬学知識、暗殺術 3 2 2 5 3 5 2 従業員：巨大カジノ 名前 職業 技能 体力 接客力 器用度 精神力 知力 運勢 ジゴ・カスモレベナ（予定） ディーラー、相談役 心理察知、手先が器用 従業員：娼婦館 名前 職業 技能 体力 接客力 器用度 精神力 知力 運勢 アビ＝キスキル フロアスタッフ 娼婦の管理、接客指導 1 4 2 3 3 2 ディタ＝トレヴァーズ 娼婦 花の世話、洋服の修繕 4 2 5 2 3 1 従業員：裏酒場 名前 職業 技能 体力 接客力 器用度 精神力 知力 運勢
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キャラ対策 家庭用キャラ対策 キャラ対策 リュウ ケン 春麗 エドモンド･本田 ブランカ ザンギエフ ガイル ダルシム バイソン バルログ サガット ベガ クリムゾン･ヴァイパー ルーファス エル・フォルテ アベル 豪鬼 家庭用キャラ対策 フェイロン キャミィ さくら ローズ 元 ダン 剛拳 セス 名前 コメント
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【作品名】D. 【DL先】ここ 【参考動画】実況あり 各キャラ参戦時期 アベル ループ最中 セス＝ケイオス 未登場 ニケ＝ニィ 未登場 皿井戸菊 菊ルート、主人公失踪後～菊死亡までのどこか ローゼン＝クランツ 未登場 キリエ・フューラー 未登場
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キャラ対策 家庭用キャラ対策 キャラ対策 リュウ ケン 春麗 エドモンド･本田 ブランカ ザンギエフ ガイル ダルシム バイソン バルログ サガット ベガ クリムゾン･ヴァイパー ルーファス エル・フォルテ アベル 豪鬼 家庭用キャラ対策 フェイロン キャミィ さくら ローズ 元 ダン 剛拳 セス 名前 コメント
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開催期間 2012/10/31～2012/11/12 特攻ファイター 【前半戦】 【能力5倍】 イグニス 【能力2倍】 アンヘル セス ゼロ(クローン) 【後半戦】 【能力5倍】 血の螺旋に狂うアッシュ 【能力2倍】 ラモン 藤堂香澄 斎祀 報酬 K ゼロ(オリジナル)
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第１８話「厄受けの巫女《サクリファイス》」 １１月３日 太陽が出始めたばかりの早朝。東京の高層ビル群から少し離れた郊外。静かな住宅街のど真ん中に周囲を屋根瓦の塀で囲まれた純和風の邸宅が鎮座する。門には“神薙”と表札が付いており、塀の内側は紅葉による色鮮やかで風流な庭、池には錦鯉が優雅に泳ぐ静かな空間が広がる。 その中にある本邸、一番大きな屋敷のとある部屋の襖は厳重に錠がかけられていた。鎖で他者を拒絶し、大量に呪符のような札が貼られている。中に妖怪か何かでも封印しているかのようだ。 その襖の前に一人の和服姿の侍女が正座している。 「秘呼（ヒミコ）様。そろそろ出られてはどうでしょうか？」 ヒミコ、日本人なら歴史の教科書で最初に聞くであろう倭国の女王「卑弥呼」の名を思い浮かべる。無論、ここにいるのは読みが同じの別人である。 「ここ３日近く部屋に篭もりっきりですし、そろそろ外に出られては…ほら、今日は天気が良いですし、軽い運動でもどうでしょうか！」 侍女が必死にしゃべりかけるが、帰ってくるのは静寂だけである。 すると、女は小さく舌打ちをすると、ヒミコを出す策でも思いついたのか、悪い顔つきになる。 「最近、お腹が弛んでますよ～。そういえば、『巫女服のサイズが合わなくなった』と仰っていましたが、どの部分が大きくなったんでしょうねぇ～。あ、そういえば祭主や巫女の者共が『秘呼様って、一旦引きこもると梃子でも出てこないって聞きますが、トイレとかどうしてるんですか？』って訊いて来たので、とりあえず『秘呼様はボトｒ… ドッグワッシャアアアアアアアアアアア！！！ 部屋の中で爆弾でも爆発したのか、突然襖が飛び出し、侍女を巻き込んで庭まで吹き飛んでいった。 「変なこと言いふらしてんじゃねえよ。クビにするよ？」 部屋の中から一人の女性が姿を表す。 ２０代後半といったところか、黒い瞳に黒髪・長髪という由緒正しい大和撫子な様相だが、毛髪へのケアが行き通っていないため、ところどころ流れたり跳ねたりしている。Ｔシャツと上ジャージにジーンズという屋敷に似つかわしくないやる気のない格好であり、本人の表情や放つオーラも気だるそうだった。 神薙秘呼《カンナギ ヒミコ》。彼女は日本古来から信仰される多神教“神道”をベースとした魔術を使う魔術師であり、それらを分類する神道系、その中で皇室の実権としての復活を目指して活動する“皇室派”の人間だ。 吹き飛んできた襖に潰されていた侍女が襖を持ち上げて出てきた。襖が顔面に衝突したようで、鼻から血を垂れている。 「し、しかし秘呼様。引きこもり、篭城となれば下の問題は不可避。数日間、一切部屋から出ず、尚且つ部屋の衛生環境を保つのであれば――――ハッ！？まさかポリラーですか！？」 「いや、違うから。っていうか。ボトラーとかポリラーとか、そんな言葉一体どこで覚えたんだ？」 「えっとその…とある掲示板で『ある女性を脱ひきこもりさせたい。助けれくれ』ってスレを立てたら、色々と知らない単語が出てきましたので…。あの、まさか垂れラーじゃないですよね？」 「いくら妾でもそこまで堕ちてないわ！！部屋を見ろ！部屋を！」 女が秘呼の部屋を覗く。パソコン機器やゲーム機、よく分からない霊装など、ちらかっている典型的なヒッキーの部屋だ。しかし、一つだけ違うところがある。それは部屋の中に更に部屋があり、そこがトイレとなっていることだった。 「何を隠そう。妾はこの完全なる引きこもり部屋のためだけに水洗トイレをこの部屋に増設し、水道も引いたんだ」 そう誇らしげに秘呼は語る。 「―――っと、こんな無駄話をしている場合じゃなかった。伊与（イヨ）。すぐにこのリストにある人物を招集して頂戴」 そう言って秘呼は伊与にB5サイズの紙を渡す。そこには幾人かの神道系の魔術師の名前が並んでいた。皇室派だけではなく、他の派閥の魔術師の名前もある。 伊与が渡された紙に目を通す。 「秘呼様。この面子が集まるって、一体何が始まるんですか？」 「箕田美繰が学園都市に現れた」 「箕田美繰って…あの厄受けの巫女のことですよね？」 「ああ。それが彼女の役目だ」 厄受けの巫女、神道系の中でも不浄・禁忌とされた術式を後世に伝える役目を持つ。 黄泉軍《ヨモツイクサ》 黄泉醜女《ヨモツシコメ》 八雷神《ヤツイカヅチノカミ》 彼女の魔術は神道において死者の世界とされる黄泉國に関わる術式であり、その全てが死や不浄と深く関わるものであった。術式の伝承が日本神話における禁忌や不浄の塊・象徴であるのもさることながら、彼女の術式は死者の魂を地上に束縛し、魍魎の兵として使役する一面がある。そのため、死者の冒涜、味方殺し、魂食らいとして忌み嫌われ、侮蔑されてきた。 しかし、それと同時に厄受けの巫女は敬意の対象としても見られた。術式を正しく後世に伝える為には厄受けの巫女は必要不可欠であり、誰かがやらなければならなかったのだ。組織、引いては国家の守護のためにその役（厄）を受け、その身を不浄と禁忌の泥の中に落とした彼女の決意と勇気は称賛に値し、それに相応しい高い地位が約束されていた。 同時に戦闘の前線に立つ者からは禁術による圧倒的な物量と戦闘能力で救世主のように崇められていた。 「光の神薙、影の箕田。妾と彼女は五行思想の対極図のように対等で対となる関係であるべきだった」 「でも、そうはならなかったんですね」 「ああ。彼女の代には、不浄とか禁忌とかを徹底的に排除して“清く正しい神道系皇室派を～”なんて謳うアホ共の声が大きくなっていたからな。迫害は今までの比じゃなかった。全く…節操無しに清濁併せ呑んでこその我らだと言うのに…」 「『愛してその悪を知り、憎みてその善を知る』ですね」 「『礼記』ね。愛する者の悪を認め、憎む者の善を認めよ。愛や憎しみといった感情で理性を曇らせず、物事の善悪を冷静に判断せよ。あいつらに聞かせて“やりたかった”わ」 秘呼は自分の言葉の過去形の部分をあえて強調して口に出した。 それは美繰を迫害した“あいつら”の存在が過去であるということ。そして、その言葉を聞かせられないということ。それ以上は語らずとも分かっていた。光の神薙の暗部が垣間見えた瞬間だ。 「ほら、ぼっとしていないでさっさとそのリストの人間を呼んで来て」 「は、はい！」 伊与は慌ててリストを握り締め、小走りで廊下を渡り、秘呼の視界から消えて行った。 秘呼は笑莉からの報告をもう一度思い出す。 コンサートホールでの箕田美繰との交戦、学園都市の暗部と必要悪の教会による共同戦線、それとはまた別の魔術師たち、更に神道系と思しき正体不明（unknown）の魔術師。 （ちょっと保険のつもりでこの事件に喰いかかってみたけど、予想以上に複雑ね。引き際を見定めないと…） 第三次世界大戦、表向きは学園都市とロシアの戦争だった。しかし、裏では今まで不可侵を決め込んでいた科学サイドと魔術サイドが堂々と衝突し、科学と魔術の不可侵が破る戦争となった。前例が出来てしまえば、次々と崩れ去る。そんな今、小規模な魔術結社は学園都市の顔色を窺いながら戦々恐々としているのだ。 今までは魔術側の問題は魔術側が片付けていた。学園都市で魔術師が暴れ回っても処理するのは魔術サイドであった。そのため、罰は軽かったり、ローマ正教やロシア成教傘下の結社の場合、ほとんど罰せられずに保護されることが多かった。しかし、第三次世界大戦で条約が一度破られた今、いつどのタイミングで学園都市の武力がこちらに向けられるか分からない。 都市ｖｓ国家という圧倒的な物量差のある第三次世界大戦で勝者となった学園都市の軍事力は世界中を驚愕させた。それだけではなく、学園都市の武装組織が国家の軍隊とは別に位置づけられていることから、国家の軍隊のための国際法が都市の治安維持組織には適用されず、結果的に法による束縛が少なく自由度が高いのもある。 神道系皇室派は皇室の始まりから続く由緒ある魔術結社だが、皇室が実権を譲渡し、日本政府が科学サイド寄りであることもあって小規模な組織で抑えられている。学園都市と敵対してしまえば一溜りも無く、向こうが本気になれば瞬く間に壊滅させられるだろう。だからこそ、ここで保険が必要なのだ。 “学園都市に対して恩を売り、同時に敵対意志が無いことを行動で示す” 学園都市上層部の人間を口車に乗せ、魔術師を学園都市に派遣した目的を述べるのであれば、この一行だけで済む。 第三次世界大戦で勢力図は大きく変わる。今までは科学サイドと魔術サイドという一種の宗教的な対立であった。しかし、今後は利益を共有した政治的な勢力図に変わり、学園都市とイギリス清教のように科学と魔術の垣根を越えた利益共同体が形成されていくであろう。 世界一の大国を自負していたアメリカも科学サイドを貫くべきか、魔術サイドと手を組んで巨大な利益共同体を形成するかで政府中枢が揺れ動いている。 そんな流れの中で神道系皇室派は学園都市と利益を共有する道を選んだ。元々、秘呼は学園都市の利益を皇室派に還元させることに腐心しており、学園都市に対してはそれなりのパイプを持っている。利益共同体を生みだす為の下地は既に完成しているのだ。それと日本国内で科学（学園都市）と魔術（神道系）が対立、内戦という最悪の事態だけは避けたい気持ちもある。故にイルミナティという共通の敵と戦うことで、神道系皇室派が共通の利益を持ち、敵対意志が無いことを学園都市に行動で示すのだ。 事を大きくしたくない学園都市としては余計な手間が省けるため、恩を売ることは間違いない。しかし、ここで重要なのは学園都市が恩義を感じることではなく、“神道系皇室派が学園都市に恩を売った”という事実だ。この事実を周囲に吹聴するだけで目的は達成される。 第三次世界大戦で勝者となった学園都市に取り付いて利益を共有しようとする魔術結社もじきに現れるだろう。その時、積極的に学園都市にコンタクトを取っていたイギリス清教、次に神道系が魔術と科学の垣根を越えた利益共同体のモデルケースとなり、後から続いて学園都市と接触しようとする魔術結社はこの二つを注視し、学園都市が大規模な結社（イギリス清教）と小規模な結社（神道系皇室派）にどのような態度を取るのか見定めることになる。学園都市がイギリス清教や神道系皇室派に対して取った行動がそのまま他の魔術結社に対する態度となる。 そう、これは恩を売ると同時に脅しでもある。「自分達を攻撃すれば、他の小規模な魔術結社も相手にすることになって、面倒くさいことになるぞ。そうなりたくなければ、利益共同体として仲良くしようよ」という―――― （さて…美繰が学園都市にいるのが確定となった今、妾も相応の準備をしないとな…） * * * 同時刻 学園都市 テキストとイルミナティ対策チームが拠点として使っているホテル。 11月2日の夜にテキスト・イルミナティ対策チームによって拘束された玄嶋笑莉、大和尊、アリサ＝アルガナン、キャンサーと付き人のジェフリーは霊装を奪われ、部屋に軟禁されていた。 アリサと笑莉、尊とキャンサーとジェフリーといった感じで所属組織ではなく、男女で部屋分けされた。 11月3日の早朝、笑莉は目を覚ましていた。 無地のピンクの寝間着というふざけた巫女服からは想像できない普通の格好なのだが、これはあの巫女服が魔術的な意味を持ち、霊装の一つとして没収されたからである。実際のところ、あれはただのコスプレであり、魔術的な意味は一切持たない。 笑莉は寝ぼけた目でアリサが寝ていることを確認する。寝相が悪いのか、それとも夢の中で何かをしているのか、毛布の中で彼女の身体がモゾモゾと動いているのが分かる。しかし、笑莉が起きていることに関しては全く気にかけていないようだ。 次に部屋に設置された監視カメラの位置を確認する。 （監視カメラはドーム状のものが天井に２つ…だけどあの位置は死角が多過ぎるねっ☆おそらくあの２つはダミーで本命の監視カメラが死角を埋め尽くすように並べられている…） 笑莉は見えざる監視カメラのことを気にしながらもベッドから降り、寝間着のまま洗面台に向かう。鏡に向かって、自分の顔とボサボサになった髪を確認すると蛇口から水を出して顔を洗い始める。普通の人よりも念入りな部分を覗いてはごく普通の洗顔の光景だった。 そして、洗顔を終えるとタオルを取って顔を拭く。 （ふぅ～報告完了☆） 一見するとただの洗顔にしか見えない行動だが、その行動には上司である神薙秘呼へ現状を報告するための水を媒介とした通信術式が隠されていた。いや、隠されていたと言うよりは、行動そのものが魔術のサインであった。 神道系は、日常的な行動に魔術を“隠す”ことに特化した天草式十字凄教とは違い、“日常的な行動そのものを魔術にする”ことに特化している。神道では普段の料理や食事、大晦日の大掃除といったものまでが神を迎えるための儀式となり、神事、引いては魔術となる。隠密ではなく、日常への“浸透”ことが神道系の特徴とも言える。 （とりあえず、向こうに気付かれずに秘呼様への報告は終わった…） 笑莉はスッキリした顔立ちで再び自分のベッドに寝転がる。二度寝する気は無いのだが、霊装は全部没収されて、他にやることが無いのだ。テレビを点けて学園都市の番組を見ることも出来るが、五月蝿くしてアリサを起こしてしまうのは悪いと思った。 （この娘が…アリサ＝アルガナン…） 笑莉が隣のベッドで毛布に包まるアリサをじっと見つめる。 彼女のことに関しては大和尊からよく聞かされている。唯一の肉親をイルミナティに殺され、その復讐に突き動かされた少女だと。そして、尊は彼女を復讐の道から遠ざけた。…はずだった。 （尊さんからはそれくらいの経緯しか聞いていないけど、彼女からすればそれ以上の感情があるんだろうね） そう思わざるを得ない、笑莉にそう思わせるほどの出来事が昨晩あったのだ。 11月2日 夜 テキストと対策チームに拘束され、軍隊蟻を撒いた笑莉たちは彼らが拠点とするホテルへと連行された。 必要悪の教会の魔術師に霊装の先端を向けられ、テキストからは銃口を向けられた状態で入念なボディチェック（無論、笑莉とアリサには女性の死人部隊が担当した）、そして学園都市側のリーダーである金髪ホストっぽい男（持蒲）が「部屋は２つしかないので、所属組織ごとに分けるか、男女で分けるか決めて欲しい」と言ってきた。 部屋が二つだけなら、そのどちらかが合理的だろう。誰もがそう思う中、一人だけ意義を申し立てた。 「そんな…私がミコトさんと一緒の部屋になれないじゃないですか…」 それはアリサだった。ホールの時にマイナス（狂乱する女たち）の歌を歌い上げた少女と同一人物とは思えないほど大人しめで控えめな言い方だった。 「ん～。でも君と…ミコトだっけ？その人と一緒にするとそこの巫女服の嬢ちゃんがそこの男たちと相部屋になっちゃうんだよね」 ―――と持蒲は少し困った顔で答える。どうやら、部屋不足はどうしようもない問題の様だ。 「でも…やっと会えたんです。何年も何年も何年も何年もかけて……やっと会えたんです！話たいことはたくさんある！掛けたい言葉も！聴かせたい歌もたくさんある！だからお願いです！私とミコトを同じ部屋にしてください！」 そう懇願し、アリサは尊の腕にすがりつく。その肢体からは想像でき無い程強い握力で掴まれているようで、ギチギチという服と皮膚、肉が軋む音と共に尊が苦悶の表情を浮かべる。 そして同時に、彼女の眼から光が消えていた。 （カムバック！ハイライト！） あまりの豹変ぶりにテキストメンバー達と対策チームの魔術師たちは驚きを隠せなかった。 「困ったなぁ。俺ってちょっとフェミニストの気があるから、こうも懇願されるとなぁ…」 すると、痛みに耐えながらも尊はしがみ付くアリサに話しかける。 「痛たたた…アリサ。手を出してください」 尊に言われた通り、名残惜しそうにアリサは腕を離す。 そして、唐突に尊は背広を脱ぎ始めた。そして、それを丸めてアリサに渡す。 「アリサ。我が儘はいけませんよ。それに私も貴方に会いたかった」 「ほ、本当？」 「ええ。本当です。しかし今日はもう暗いですし、部屋も決められてしまったのなら仕方ありません。その背広は私のお気に入りなのですが、もし良ければそれを私の代わりだと思って下さい」 （どこのにっぽん昔話だよ！？） 「はい…」 これ以上ない幸福に包まれたような表情でアリサは答え、丸まった背広をギュッと抱きしめた。「恋する乙女が一番美しい」と言うように、尊と対話する時こそアリサ＝アルガナンという少女の魅力が最大限に発揮された瞬間だった。 そして部屋は男女に分けられ、翌朝に現在に至る。 （イルミナティに家族を奪われた復讐者。尊さんは彼女を復讐の道から離したつもりだったんだろうけど、そう簡単に割り切れるものじゃないよね。多分、彼女は今でもディアス＝マクスターのことを八つ裂きにしたいと思っている） 笑莉は冷静にアリサのことをそう分析する。あくまで第三者の分析であり、誰かを殺したいほど憎んだり、大切な人を誰かに奪われた経験のない笑莉にとって、アリサと尊、それとキャンサーとかいう男が抱く復讐の決意は凄まじいものだと思われる。 （でもあそこまで心酔している尊さんに『復讐をするな』と言われてしまった。愛する人からの言葉と復讐と言う遺族の“本能”。その板挟みに苦しみ、そして壊れてしまった。ディアスを殺害することを“復讐”ではなく、“亡き母に会う為の作業”と捉えるようになった…） 本業のカウンセラーばりの精神分析をしてみせる笑莉。得意というわけではないが、今までもいきさつを考えればこれが妥当だろうと思うものを考えて行く。そして、彼女の考えはほとんど当たっていた。 「ん～」 アリサが何か寝言を呟きながら毛布の中でモゾモゾと動き始める。頭から足先までスッポリと毛布の中に入っている為、彼女が今どんな夢を見ているのかは分からない。良い夢なのか、それとも悪夢なのか… 「はぁ…んんっ！ミコト…らめぇ…そこはらめぇぇぇぇ…」 （なんて夢見てんだ！あんたって人はあああああああああああああああああ！！！！！！） 嬌声、喘ぎ声……どう考えても大和尊とニャンニャンやってる夢を見ているとしか思えない。そういえば、彼から預かった背広がどこにも見当たらないのも気にかかる。 （これは起こす？止める？うんそうね。これは止めるべきだねっ☆だってこの部屋には監視カメラがたくさん付いてるんだもん☆） 「そう！この行動は正義！監視カメラに彼女のあられもない姿が写されるのを防ぐ為の行動なんだからねっ☆」 我が玄嶋家に代々伝わりし、究極育児法《ゴッドマザーテクニック》の一つ… 天国崩し《アウターヘヴン》！！ 説明しよう。“天国崩し”とは玄嶋家に代々伝わりし究極育児法の一つ、中々布団から出てこない子どもを絶対に起こすことのできる奥様必見の秘術である。 まずは普通どおり、掛け布団を引っぺがして対象を外界に晒す。ここまでは普通だ。そして瞬時に敷布団にかかるシーツを掴み、一気にそれを剥がす。ここで重要なのは一度シーツにうねりを作り、シーツが対象の身体に巻きつくようにし、柔道の一本背負いの要領で、そして同時に対象の身体に回転をかけて拘束で引き剥がすことが重要である。 天国崩しによってアリサの身体は回転しながら2mほど浮き上がり、ベッドのスプリングに墜落した。 その衝撃でアリサは起きる。天国崩しで宙に飛ばされて顔面から落下してしまったため、鼻を手でおさえていた。 天国の様な夢を見ていたのに突然、世界が何度も回転してベッドに落ちるという、まさしく天国から叩き落とされた様な感覚だった。 アリサが見上げると、隣のベッドで笑莉が仁王立ちしていた。 「昨晩は（夢の中で）お楽しみだったようね？」 アリサは何のことだか分からず、首を傾げる。人間、自分が見た夢を即座に思い出すことは難しい。 そこで「とても気持ちの良い夢を見ていたようね？」―――と笑莉がヒントを持ちかけた。 そこでアリサは思い出した。自分がどんな夢を見ていたのか。そして、自分は寝言がよく出る癖があることも…。 声にもならない小さな嘆きと共にアリサの顔は茹でダコのように真っ赤になった。 「どんな出会いだった？初デートはどこ？どんな服を着て行ったの？結婚式はもうした？洋式？それとも尊さんに合わせて和式なのかしら？一軒家？それともマンション？どんなプレイだった？子どもは何人？名前はもう決めているの？」 度重なる質問攻め、拷問レベルの精神攻撃が笑莉の口から豪雨のように降り注ぐ。「ああああ…」と小さく嘆きながら赤面する顔を手で覆い隠すアリサの反応が楽しくて、笑莉はついつい彼女を自分の思惑以上に追い詰めてしまった。 「ああ…えっと…その…うああああああああああああああああああああああん！！」 アリサは大粒の涙を流しながら、笑莉から掛け布団を奪うと再び全身を包み込み、貝のように引きこもった。「穴があったら入りたい」というのはまさにこのことなのだろう。 * * * 学園都市のとある病院 患者のプライバシーを何よりも尊重することで定評のとある病院。そんなものは暗部や裏の人間を客として引き込むための宣伝文句であり、暗部組織やスキルアウト、他にもワケ有りの患者が多く集まり、院内はガラの悪い患者とそれに負けず劣らず屈強な医師と看護師でカオスを極めている。 その病院のVIPルーム。最も安全で最も高価で最もぼったくりな病室。しかし、その病室内では病院らしからぬ光景が広がっていた。 「おかわり！」 「はいはい。次は何が良い？デラックスエビマヨ弁当？いわしハンバーグ重？」 部屋にただ一つあるベッドに腰掛けるのはマチことマティルダ＝エアルドレッド。その傍らにある椅子にはセス＝アヴァロンが座っている。 セスの傍らにはコンビニ弁当が入ったビニール袋がいくつもある。おおよそ10人前といったところか。そして、マチのベッドの上には既に彼女によって平らげられた空の弁当箱がいくつか散乱していた。 「エビマヨ！」 「はい。あと、一応ここ病院だから静かにね」 セスはビニール袋からデラックスエビマヨ弁当を取り出す。ビニールから弁当が顔を出した途端、マチはセスから弁当を奪い、またガツガツとベッドの上で弁当を食べ始める。 「それにしてもよくそんなに食べれるね…。いや、大食いだってのは知っていたけどさ」 「いやぁ～。身体のエネルギーとか全部あの木の槍に吸われちゃったからね。ここで食べて取り返さないと！」 （そういうのって、普通は点滴とかだよな…） 担当医も下を巻くほどのマチの回復力の早さ、そして今セスに見せつけられる異様なまでの食欲とブラックホールの如き胃袋に常識は通用しなかった。 ノックもせず、いきなり病室の戸を開けてクライヴが部屋に入ってきた。セスの傍にある大量の弁当とマチのベッドの上を占領する空の弁当箱たちがすぐ視界に入った。 「マチ…。医者に『安静に』って言われなかったか？」 クライヴに声をかけられていてもマチは食べるのをやめず、口に大量に食べ物を含んだ状態でモゴモゴと何かを語る。 「ちゃんと飲み込んでから言え。行儀が悪いぞ」 （あ…パパっぽいなぁ…） クライヴとマチを見ると必要悪の教会の魔術師の大半は同じ感想を抱く。義手という共通点でお互いに親近感を覚えていることから、2人のことを「義手親子」と称する者が多い。 問題は… 「セェェェェェェェェェェェス。だぁーれぇーがぁーパパだってぇえええええええええええええええ？」 クライヴがパパと呼ばれることを異様なまでに嫌がっていることだ。それもそのはず、彼はまだうら若き22歳。まだ恋をしたり遊んだりしたい年頃だ。 クライヴは拳でセスの頭を挟み、万力のようにゴリゴリと彼の頭を捩じり潰す。片方は生身の手だが、もう片方はほぼ金属と言って差し支えのない義手であり、その堅さも痛さの生身の比じゃない。 「痛い痛い痛い痛い！まだ口に出してないのに～！！」 「“まだ”ってことは、そう思ってんじゃねえかああああああ！！」 「ぎにゃあああああああああああああ！！！」 クライヴがセスを制裁している間にマチは全ての弁当を平らげた。パンパンに膨れたお腹をポンポンと叩き、私服の満腹感を堪能する。 「ふー。食べた。食べた」 「そうか。喰い終わったなら、状況を説明するぞ」 「「はい」」 和気藹藹としていた３人が真剣な眼差しになる。必要悪の教会、異端中の異端たる｢汚れを一手に引き受ける｣機関、魔術エージェント、彼らが戦いの中に身を置く存在であることを思い出させる。 クライヴは１１月２日にあった出来事を全て説明した。 「私が寝ている間にそんなお祭り騒ぎになってたなんて…ズルい！」 「お祭り騒ぎって…お前なぁ…。一応、これは仕事だからな。それにホールの戦闘って言ったって、戦ったのはイルミナティと第三勢力。俺達は後から出てきて漁夫の利を得ただけだ」 「やったのはハーティと藍崎さんとカールだけどね」とセスの補足説明が入る。 マチはベッドの下から持蒲から配布されたタブレット端末を取り出して操作する。 「でもわざわざクライヴが病院に来なくても、このタブレットで情報を共有出来るんじゃないの？」 「ああ。勿論それも分かっているさ。けど、端末越しじゃお前の様子は分からないし、テキストの奴らに聞かせたくない話もある」 マチがベッドから身を乗り出す。どうやら興味津津のようだ。彼女は基本的に難しいことは考えないことにしている。戦闘バカであることは自覚しており、己の興味が向くままに活動するのが彼女の魅力とも言える。 対してセスはあまり聞きたくないという表情で固唾を飲む。“聞かせたくない話”、それはテキストに対して秘密を持つことであり、彼らを完全に信用していないこと、そして彼らと離反する可能性も示唆していた。 ３人が盗聴対策の為にタブレット端末の電源を切る。 「お前らも知っての通り、俺はこの作戦に関わる全ての情報を極秘裏にイギリス清教、最大主教のところに流している。そこで最大主教から作戦の変更が言い渡された」 「ま、まさか『イルミナティに加担しろ』とか？」 「アホぬかせ。学園都市と共同戦線をとるのはいつもの通りだ。変更点はただ一つだけある」 “もし学園都市が予想より早くイルミナティ幹部を処理し、天地開闢計画の阻止に乗り出した場合、それを裏から妨害せよ” それを聞かされたセスとマチは唖然とする。自分達はその阻止のために派遣されたのに、その目的を完全に否定する命令が言い渡されたのだ。 「計画の阻止の妨害って…クライヴさん。どういうことですか？」 「さぁな。最大主教の考えていることはよく分からん。それと偶然かどうかは分からないが、学園都市上層部もテキストに『幹部の処理を優先せよ』って指示を出している。計画の全容が明かされてから、いきなり手の平をひっくり返したな」 「どうするんですか？」 「どうするも何も俺達下々の者は下手に考えず指示通りに動くしかない。それに“予想よりも早く”ってところが気にかかる…」 「とりあえず、まずはイルミナティの幹部をボコればいいんでしょ？」 「にひひ」と笑いながらマチは義手の拳を握りしめる。 セスはまだ腑に落ちない点はあるが、ミランダを取り戻すという目的を考えれば、むしろ幹部の対処を優先する方が都合が良いと思い、反論はしなかった。 「とりあえず、異論は無いってことで良いな？」 「もちろん！」 「ちょっと腑に落ちない点はありますが…了解しました」 ２人の了承を得られてクライヴは一安心し、一息吐いた。 「そうか…。じゃあ、俺は仕事に戻る。マチはまだ休んどけ。セスはどうする？」 「俺は…行きます。丸一日休んだようなものですから」 そう言って、セスも椅子から立ち上がり、マチが空にした弁当のゴミを全て集めて一つのビニール袋にまとめる。 セスが準備を終えるのを見計らうとクライヴは病室の扉を開け、「じゃあな」と言ってマチに手を振りながら出て行った。 「じゃあね。マチ。ちゃんと休んどくんだよ」 「ちゃんと私の出番も残しといてね～」 病院の廊下でクライヴが、それに続いて後ろからセスが他のものには目もくれずに歩く。 「クライヴさん」 セスが少しおどおどとした態度でクライヴに声をかけた。 「どうした？最大主教の判断のことなら…」 「いや、そっちじゃないです。出来れば、あまり他人には聞かれたくないというか、クライヴさんにとってあまり他人には聞かせたくない話なので…」 「………。そうか」 クライヴが後ろに手を出し、小さな紙切れをセスに渡す。通信用の護符だ。この護符を持つ者同士だけで声を出さず、テレパスのように会話することが出来る。 （話とは何だ？） （聞かせてほしいんです。クライヴさんがイルミナティ幹部だった頃の話を…） その言葉を聞いた途端、クライヴは足を止め、踵を返す。 （どこで知ったんだ？） クライヴの冷たい眼差しがセスに突き刺さる。 （以前、イルミナティに関する試料を漁っていた時にクライヴさんが写っている写真があったので…。あ、いや、クライヴさんのことを疑っているわけじゃないですよ） （あ、ああ。それを聞いて安心した。てっきり元イルミナティ幹部だから、スパイ疑惑をかけられるんじゃないかと…） （そうだったら、とっくに最大主教にバレてますよ。あの人に隠し事は通じませんから） セスがクライヴの冷たい視線に負けじと頑張って作った笑顔で冗談を飛ばす。クライヴも自分の心配が杞憂だったことが分かり、安堵していつもの表情を取り戻す。 （そうだな。俺がイルミナティに入ったのは今から５年ほど前だった…）
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